リサイタルを終えて〈韓吏花ピアノリサイタル〜ウィーンを愛した作曲家たちの最晩年〜〉

かめおか桂ホール主催による、韓吏花ピアノリサイタル「WIEN~ウィーンを愛した作曲家たちの最晩年~」多くのお客様(満員御礼)に聴いて頂き幸せな時間となりました。

今年は個人的に色々と節目となる年でした。

はじめてウィーンの地を訪れて25年
はじめてリサイタルを行った時から20年
そして、日本とウィーンの友好150年という記念年

今年の年明けに「今年こそはリサイタルしよう」と心のなかで豊富を唱えていたと同じ頃(何か届いているかのようなタイミングで驚きでした)、かめおか桂ホール様からリサイタルへのお声をかけて頂き実現した今回のリサイタル。
そして、かめおか桂ホールのピアノはベーゼンドルファー。

自然とプログラムはウィーンで生まれた作品へと絞られていき、今年はシューベルトの即興曲に取り組みたい気分だったので、もう少し絞り込んで、その地を愛した作曲家たちの晩年作品へとまとまっていきました。

今回のプログラムでハイドンのアンダンテと変奏曲は完全に新曲で、2ヶ月ほど前にある人とのお別れがあったので、その方と対話するつもりで毎日向き合いました。

モーツァルトのソナタは大学受験で取り組んだ作品。長らくお蔵入りしていましたが、今年の初夏、生徒の曲選びでこんな曲だよと弾いて聞かせるのに弾いてみたら、10代の頃とは全然違った感じで心に沁みてきて、久しぶりに弾いてみたくなった作品。

ベートーヴェンは大学修士試験のために用意したプログラムのうちの一つ(実際には試験では弾いていませんが、、、)この作品も20代当時美しいなと思って好きで取り組んでいましたが、20代の頃には感じなかった面白みや、味わいを感じるようになって、年月経て取り組むことの面白さ、歳を重ねることの喜び(?)を感じたものです。

シューベルト即興曲の3曲目は、留学するきっかけとなるコンクールの2次予選で弾いたのですが、その時にウィーンから審査員で来日されていたTeufulmayr先生のレッスンをはじめて受けた曲で、感動のレッスンに出会った時に弾いた想い出の曲です。

「シューベルトのDurは悲しみだよ。」と教わり、「ピエロが涙をポロポロ」と高校生の私の字で書き込みがあります。Durをきっとカラッと明るく弾いていたんだろうなー。顔では笑ってるのに心の悲しみがポロポロと涙となってつたってくる様子をイメージするだけで細かな音たちに憂いが生まれるのだから、イメージの仕方一つでこんなにも変わることが面白かったのと、想像力掻き立てる音や歌や言葉がいっぱい降ってくるようなレッスンで、夢中で先生の言葉や音に耳傾け、興奮の時間はあっという間に過ぎていったのが想い出として鮮明に残っています。

という感じで、私にとって大切な想い出(苦しんだり、もがいたり、喉から心臓飛び出そうな緊張をしながら弾いた想い出だったり、喜びを得た想い出だったり色々)が詰まった作品を再度紐解きながら、作品を通して若かりし日々を思い出し、先生たちからの教えを振り返る時間は、私にとってとても良い時間でした。

コンサート当日は、私自身よい集中力の中、作品を大切に想う気持ちをピアノを通して表現できたと思います。もちろん反省や課題はありますが、また次へと成長できるための糧として向き合っていきたいと思います。

毎回、「この本番終えて次人前で演奏できるか?(演奏していいのか?)、それとも今回限りとなるか、、、」という気持ちで本番の朝迎え、道中、そしてリハーサルの間めちゃくちゃ緊張しています。リサイタル終えた今。次のプログラムを決めていって、譜読みに取り掛かることができていることにホッとしています。

今回、気持ちのよい響きが広がるホールの空間と、ビーテックの菊池さんに整えて頂いたベーゼンドルファーで演奏できることは本当に幸せなことでした。パレット上で音の響きを微妙なニュアンスで混ぜていくことができたり、撫でるようなタッチで弱音を叶えることができたり、空間に広がる音やピアノからインスピレーションを受けて心から楽しんで遊べました。ピアニストは自分の相棒を持ち歩けないのが常なので、どんなピアノであれその時の最善の道を探すためリハーサルでは会場のピアノと向き合い、心開放して仲良くなろうと耳と心と頭と身体の感覚をフル回転するのですが、信頼おける調律師さんにプログラムの中でこんな世界を描きたいなどリクエストして整えて頂いたピアノと空間に身も心も委ねて演奏できるって本当に幸せだなと感じた本番でした。高2の時にベーゼンドルファーに出会って、はじめて鍵盤押さえた時のタッチの感触や、出てくる音の包まれるような温かみに感動し、今もずっとベーゼンドルファーの音にも見た目にも一途に惚れています。やっぱりベーゼンドルファー大好き。

かめおか桂ホールの桂先生、ビーテックの菊池さん、録音担当下さっているNさん、かめおか桂ホールスタッフの皆様、いつも応援下さっている皆様、そして今回聴いてくださった皆様、この場を借りて心より御礼申し上げます。今後も成長していけるよう精進してまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

韓 吏花

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